孤独死すると多くの費用がかかるって聞いたけど、何にそんなに費用がかかるのでしょう?
原状回復費用ですね。
亡くなった借り主の遺品整理や床に広がった体液などを取り除くための特殊清掃に費用がかかるのです。
その費用は誰が支払うのですか?
基本的には借り主の遺産や保険金で支払います。
今回は孤独死したときの原状回復費用の支払い責任についてみていきましょう。
もくじ
第6回孤独現状レポートによれば、孤独死の原状回復には平均で39万円程度の費用がかかることがわかっています。原状回復とは、最初に借りた状態に戻し、次の入居者が住めるようにすることです。
原状回復費用の請求は支払いの責任がある順番におこなわれます。
支払い責任がある人を、責任が大きい順に並べると次のようになります。
つまり、原状回復費用の支払い責任が最も大きい人は、死亡した借り主です。
借り主にある程度の資産があるときは、遺産から原状回復費用の支払いがおこなわれます。
ただ、借り主に資産があると言っても、大家や不動産業者が勝手に遺産を使用できるわけではありません。
まず、相続人が遺産を相続し、その後相続人から費用が支払われるといった流れになります。
また、借り主が孤独死保険や、特約つき家財保険などに加入していた場合は、原状回復や遺品整理について補償を受けられるケースもあります。
では「借り主が保険に加入していない」「財産がなく相続人が相続放棄をした」などの場合は誰が費用を支払うのでしょうか。この後、さまざまなケースについてみていきましょう。
借り主に相続人や連帯保証人がいるケースは、相続人または連帯保証人が費用を負担します。
賃貸借契約は借り主の死亡後自動的に終了することはありません。
民法第896条によれば、「相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を継承する」とあります。
つまり、借り主が得た「建物を借りる権利」も相続人に相続されるため、貸し主である大家は、相続人に原状回復費や未収賃料を請求できることになります。
相続人が相続放棄をするケースも少なくありません。
もし相続人が相続放棄をすれば、「借り主が得た建物を借りる権利」も失われるため、相続人が原状回復費用を支払う必要はありません。このケースでは連帯保証人が費用を負担することになります。
たとえば
などです。
では相続人と連帯保証人が同じで、相続放棄をしたらどうなるのでしょうか。
このケースは、連帯保証人が費用を支払うことになります。
たとえば借り主の子どもであるAさんが連帯保証人になっていた場合は、仮に相続人Aさんが相続放棄をしても、Aさんに支払いの義務が残るということです。
「相続放棄をしたのにどうして?」と思うかもしれませんが、連帯保証人の義務は、相続放棄をしても消滅しません。つまり、相続放棄後も連帯保証人としての費用負担の義務が残ります。
借り主が生活保護受給者のケースも、大きな変更点はなく、基本的には相続人や連帯保証人が費用負担者となります。ただ、生活保護受給者は、親族と疎遠になっており、相続人や連帯保証人が不在の場合も多いです。
連帯保証人が不在のときは、保証会社を利用して賃貸契約をおこなっています。
そこで、保証会社が代わりに費用を負担します。
保証会社の契約内容によっては、残置物(遺品)の撤去までが保証内容となっている場合もあるため、事前に確認しておくとよいでしょう。
孤独死発生時の原状回復には、数十万円〜数百万円のお金がかかります。
次の表は、2020年の孤独死発生時の原状回復費用についてまとめたものです。
孤独死の原状回復費用
平均損害額 | 389,594円 |
最大損害額 | 1,528,329円 |
最小損害額 | 5,400円 |
(出典:第6回孤独死現状レポート 一般社団法人日本少額短期保険協会 孤独死対策委員会)
では、原状回復とは具体的にどのような費用がかかるのでしょうか。
遺品整理は、遺体の損傷具合に関わらず必ずおこなうべき作業です。借り主の死亡後は、家の中に家具や家電などの生活用品がそのまま残されている状態です。
しかし、残置物は相続の対象となるため、大家や管理会社が勝手に処分することはできません。
相続人に処理を依頼するとよいでしょう。
相続人・連帯保証人がいない場合や、相続人が相続放棄をした場合は、相続財産管理人の選任手続きをおこないます。相続財産管理人とは、相続財産の管理や処分をおこなう人で、選任には家庭裁判所に申立書を提出します。
遺品を管理する人がいない場合は、トラブル防止のためにも、相続財産管理人に処分を任せましょう。
もし孤独死の発見が遅れ、遺体が損傷している場合は、特殊清掃をおこなうことになります。
特殊清掃とは一般的な清掃とは異なる、特殊な作業を実施する掃除のことです。
たとえば
などの作業をおこなうことで、孤独死が発生した部屋を人が住める状態に戻します。
「遺体の損傷が酷くなければ特殊清掃は必要ないのでは?」と思うかもしれません。
しかし、孤独死が発生した部屋は室内にニオイが残ることが多いため、損傷が酷くないケースでも、一度特殊清掃業者に室内の状態をチェックしてもらうことがおすすめです。
リフォームは遺体の損傷が酷く、汚物清掃や消毒剤の散布だけでは原状回復が難しい場合におこなわれます。
たとえば必要があれば
などの作業をおこないます。
リフォームは必須作業ではありませんが、遺体の状態によっては、リフォームせざるを得なくなるケースも多いです。第6回孤独死現状レポートによれば、孤独死の発見までの平均日数は17日であると書かれています。
死後2週間以上が経過すると、遺体の損傷が進んでいると考えられます。リフォームが必要かどうかも、プロの判断に任せることが重要です。
これまでみてきたように、孤独死の原状回復には多くの費用がかかります。
これらの費用を相続人や連帯保証人に全額負担してもらいたいところですが、実際は、減価償却の問題があるため、残念ながら全額を請求することは難しいです。
では、どの程度請求ができるのかというと、それは次の2つによって変わります。
それぞれの原状回復費の請求範囲について詳しくみていきます。
死因が病死や自然死の場合は、借り主が汚損していない部分以外の回復費用を請求することは難しいでしょう。
なぜなら、病死や自然死は誰にでも起こり得ることで、借り主に責任はないからです。
そのため、一般的な賃貸物件の原状回復時と同様の扱いになり、相続人や連帯保証人に費用の全額を請求することは不可能となります。死因が病死や自然死の場合は、大家の費用負担は比較的大きくなってしまうと言えます。
死因が自殺の場合は、かかった費用の大部分を請求できるケースが多いです。
なぜなら、自殺は病死や自然死とは異なり、故意におこなわれる行為なので借り主の過失となるためです。
また、死因が病死や自然死でも、部屋がゴミ屋敷状態の場合は、借り主の過失が認められるため多くの費用を請求できます。負担割合でお悩みの際は、弁護士に相談することをおすすめします。
今回は、孤独死が起こったときの原状回復費用は誰が負担するのかみてみました。
支払責任があるのは亡くなった本人ですが、亡くなっているため、具体的には相続人(多くの場合は遺族)が故人の遺産や保険金で支払うことになります。
ただ、実際には全額を負担してもらうのは難しく、家主の負担が多くなる場合もあります。
さて、原状回復には遺品整理と特殊清掃が欠かせません。
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もちろん、必要があればリフォームもおこないます。
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