毎年各地で土砂災害が起こりますね。もし、裏山が崩れて、
家の中にまで土砂が入ってきたらどうすればいいんでしょう?
土砂が堆積している場所や土砂崩れが起こった原因などによって、
撤去までの対応方法が異なってきます。
私有地の土砂だから、土地の所有者が撤去しなきゃいけないんですよね?
原則はそうですが、土砂崩れの原因が自然災害などの場合は、
自治体が公費で撤去してくれるケースもありますよ。
もくじ
台風や地震、洪水などが引き起こす土砂崩れは、私たちの日常生活に大きな支障をきたしてしまいます。
もし土砂災害に見舞われた場合、一刻も早く土砂を撤去する必要があります。
土砂を撤去する際には次のような原則があります。
起こった災害がどちらのケースに当たるのか判断がつかない場合は、次のような手順で作業を進めていくことをおすすめします。
では、国土交通省の「宅地内からの土砂・がれき撤去の事例ガイド令和2年3月~令和元年東日本台風、平成30年7月豪雨をうけて~」を元に見ていきましょう。
まずここでは、自治体に公費で土砂撤去をしてもらった実際のケースを一緒に確認してみましょう。
たとえば、令和元年東日本台風で被災した宮城県丸森町では、宅地内の土砂撤去について以下のように定めました。
これを見ると、「台風19号の大雨により発生した大規模な河川の氾濫やがけ崩れにより流出した流木や岩石が混じった土砂等が堆積した宅地について撤去が困難な方は、 所有者からの申請に応じて、町が所有者に代わり撤去をおこなう。
ただし、家屋内や床下に堆積した土砂等の撤去については、対象外とする」と定めています。
つまり、
という条件のもと、自治体が土砂の撤去を公費でおこなったケースになります。
国土交通省「宅地内からの土砂・がれき撤去の事例ガイド」令和2年3月~令和元年東日本台風、平成30年7月豪雨をうけて~(前掲)には他にもたくさんの事例が紹介されていますので参考にしてください。
実際に、広島県呉市が公費で土砂を撤去するときには、下記の流れで作業が進められていきました。
【STEP1】 市役所・各市民センターで受け付け
【STEP2】書類審査および現地確認
【STEP3】事前立会(撤去前に所有者と現地にて現状確認)
【STEP4】撤去作業
【STEP5】完了立会(所有者と撤去の完了を確認)
【STEP6】撤去完了(呉市から「撤去完了通知書」が送られてくる)
このように、自然災害などにより発生した土砂の中でも、一定の条件を満たしているものについては、自治体が撤去してくれるケースがありますので、ご自分のケースがどのような場合にあてはまるのか不明な場合は、まずは一度、自治体の担当窓口に相談されるのがいいでしょう。
万が一、自治体へ撤去依頼ができないケースの場合は、土砂撤去をご自身でおこなう必要があります。
自身と言っても自力で土砂を撤去するのは現実的ではないので、ここでは業者に依頼して撤去してもらうことを想定します。
土砂撤去をおこなう業者といえば、地元の工務店や建設会社、その他専門業者などが挙げられます。
ただし、業者を適当に選んでもいいのかというとそうではありません。
適正価格で、きちんと最後まで作業を完成させてくれる信頼のできる業者を選びたいですよね。
普段からお付き合いのある業者がいれば安心して依頼できますが、急な土砂撤去の依頼となると、業者選びをする時間もあまり取れないことでしょう。
そんなとき、「とりあえず任せてしまおう」と適当に見つけた業者に依頼してしまうのは、高いリスクが伴います。
ご自分に合った、きちんとした業者を選ぶにはどうすればいいのでしょうか。
そのためのチェックポイントをみていきましょう。
土砂撤去の内容は、素人にはなかなかわかりにくいものです。
しかしそれをいいことに、「作業一式」という名目で、法外な値段を吹っかけてくる悪徳業者もいます。
見積もりを提示された場合は、「作業一式」ではなく、どの作業にどれだけの費用がかかるのかをきちんと項目別に出してくれているのかどうかをチェックしてみましょう。
作業内容について不明点を感じた場合、うやむやにせず、丁寧に回答してくれる業者は安心できますよね。
「どのような手順で作業をおこなっていくのか」「どのような薬を散布するのか」など、こちらからの問いに丁寧に答えてくれる業者を選びましょう。
土砂撤去は作業内容が広範囲にわたるため、あらかじめ作業範囲とかかる工期を明確にしておく必要があります。
作業途中で齟齬があったり、「撤去を依頼したのに一部残された!」といったトラブルにならないためにも、作業前にお互いに明確にしておくことが大事です。
過去に似たような作業事例がないかどうかをチェックしましょう。
同じような現場を経験している業者なら、作業にも慣れていて安心できます。
ホームページで作業例を紹介している業者も多くあります。こうした情報をあらかじめ見ておくと安心です。
ここまで土砂の撤去を自治体がおこなうケースと自分で専門業者に依頼するケースをみてきましたが、気になるのは撤去費用がどこから出るのかという点です。
土砂撤去は一定の条件を満たす場合、国から自治体に向けて、次のような3種類の補助金が出る場合があります。
土砂やがれきの除去等に関する国からの支援制度
これらの補助金は、住民一人一人に支給されるものではなく、国から自治体へ交付されるものですが、それによって被災者の費用負担が軽くなることにもつながります。3つの支援制度について簡単に紹介していきましょう。
「災害救助法」のうち「障害物の除去」の項目で、以下の内容が定められています。
国から地方自治体への支援金の上限は137,900円以内(1世帯当たり)となっています。
災害発生の日から10日以内が救助期間として定められており、支援する対象としては、スコップなど土砂除去のための必要機械・器具などのレンタル費・購入費・輸送費、そして作業に従事する作業員への賃金があてはまります。
暴風、洪水、高潮、地震、その他の異常な天然現象および海岸へ流れ着いた大量の廃棄物などのうち、生活環境を守るために処分が必要な廃棄物(がれき)の収集・運搬・処分や、災害に伴って便槽に流入した汚水の収集・運搬・処分などを対象とする制度です。こちらは環境省が管轄しています。
かかった作業費用の2分の1が国から地方自治体(一部事務組合、広域連合、特別区を含む)へ給付されます。
こちらは、以下の土砂を排除する際、その作業費用を国が地方自治体に補助する支援制度です。
国土交通省が管轄しています。
参考:国土交通省「堆積土砂排除事業について」
上記条件にあてはまる土砂を排除した場合は、かかった費用の2分の1が国から地方自治体へ補助されます。
このように、被災状況により国から自治体に向けて3種類の支援制度が用意されているわけですが、一見しただけではわかりにくく思えるかもしれません。
そこで、3つの支援制度の内容を1つにまとめたものを引用しますので、参考までにご覧ください。
【発災時の宅地内にある廃棄物・土砂の排出に関する国から被災自治体への支援制度一覧】
※市区町村が事業をおこなう前に、所有者等が事業者に依頼し、宅地からの撤去をおこなった場合の手続きについては、環境省にお問い合わせ願います。
引用:国土交通省「宅地内からの土砂・がれき撤去の事例ガイド令和2年3月~令和元年東日本台風、平成30年7月豪雨をうけて~」(前掲)
◯…国が全面的に補助
△…作業費用を補助してもらうにあたり一定の条件がある
上の表のように、土砂撤去については国から自治体への支援制度がそれぞれの状況ごとに定められています。
今回は、台風や豪雨で土砂災害が起こったときの土砂の撤去についてみてきました。
原則として私有地の土砂撤去は所有者がおこないますが、自治体が公費で撤去してくれるケースもあります。
つまり、土砂を撤去するのは
のどちらかになります。どちらに相当するか判断ができない場合は、まず自治体に相談しましょう。
公費での撤去ができないケースでは、自分で専門業者に依頼します。
土砂撤去業者は
などをポイントに選びましょう。
自分で専門業者に依頼した場合国から自治体に向けて
に基づいた支援制度があります。
土砂を放置すると、悪臭、砂ぼこり、そして健康被害などの弊害があります。この記事をお読みになることで、土砂の撤去問題が少しでもスムーズに解決し、平穏な暮らしが戻ってくることを願っています。