台風や集中豪雨などの水害で床下浸水の被害に遭った場合、
保険金は下りるんだろうか?
床下浸水の場合、「火災保険による補償」は受けられないのが
一般的な火災保険のルールです。
もくじ
集中豪雨や洪水などで「床下浸水」の被害に遭った場合、火災保険による補償を受けることが
できないのはなぜでしょうか。
それは、水災補償における「損害保険金の支払い条件」は、以下の3つを満たす必要があるからです。
そもそもの大前提として「床上浸水であること」が、損害保険金の条件になっています。
つまり、床下浸水では損害保険金を受け取れないのです。
仮に、支払条件(2)で挙げた「地盤から45cm以上の浸水」であったとしても、支払条件(3)として挙げた「再調達価額の30%以上の被害が発生していること」が満たせないのが一般的です。
たとえば、ご自宅の評価額が5000万円の場合「再調達価額の30%以上の被害」は
5000万円×30%=1500万円
となります。
床下浸水の被害に遭って、1500万円もの被害を被るケースはまず無いでしょう。
そのため、実質的に「床下浸水=損害保険金が受け取れない」というわけです。
床下浸水では火災保険の損害保険金が受け取れないのですね。
では地方自治体の「支援金」はどうでしょうか?
残念ながら、支援金が受け取れるケースはほとんど皆無なのが現状です。
洪水や集中豪雨などの水害に遭った場合の公的支援として、以下の2つがありますが、
いずれも「半壊以上」が条件です。
水害に遭った際の公的支援は2つあります
それぞれをみてみましょう。
以下の1・2を満たすこと
※別途、収入要件もあり
1世帯あたり最大54万7000円
※災害の年度・事案によって金額が異なる
参考:内閣府「住宅の応急修理」
10世帯以上の住宅全壊被害が発生した市町村等に住んでいること
かつ、以下5点のいずれかに該当すること
1世帯あたり最大300万円
参考:内閣府「被災者生活再建支援制度の概要」
2つの公的支援の「対象者の条件」にあるとおり、住宅が全壊した場合や、半壊だとしても「大規模な補修が必要」「住めない状態が続いている」など、相当な被害を受けない限り、公的支援は受けられないケースが多いです。
公的支援は、あらゆる人に救済の手を差し伸べるというよりは「住めない状態になった」「大規模な修理が必要」といった人に向けられた限定的なものと解釈しておくとよいでしょう。
床下浸水だと「損害保険金」も「公的支援」も受け取れないことをみてきました。
しかし実は、床下浸水であっても「損害保険金」や「公的支援」が受けられる場合があります。
どんなケースがあるのでしょうか。
以上の4つです。
では、1つずつみていきましょう。
火災保険のなかで「浸水条件なし(=床下浸水でも補償が受けられる)」の特約があります。
それは、東京海上日動が提供する「トータルアシスト住まいの保険」のオプションサービス「特定設備水災補償特約」です。
この特約の場合、床下浸水であっても、水害によって生じた「自宅の機械設備の損害」が補償されます。
「トータルアシスト住まいの保険」のオプション「特定設備水災補償特約」補償対象の機械設備
被害を受けた際に受け取れる金額は、支払う特約の料金によって「50万円・100万円・150万円・300万円・500万円」から選択することができます。
上に挙げたような機械設備を保有している方は、特約をつけると安心できるでしょう。
しかし、この特約では、汚泥の除去や消毒などの費用が出るわけではありませんので「部分的な補償に過ぎない」という点については、認識しておいてください。
2つ目のパターンが「義援金」です。床下浸水であっても、義援金が受け取れる場合があるのです。
義援金とは、被災者が元の生活に戻れるように、一般市民や企業などから募金を募り、地方自治体などを通じて分配されるお金のことをいいます。
たとえば、2020年7月に起こった熊本県の豪雨では「一部損壊」との認定をされた世帯にも、1世帯あたり6万円の義援金が支給されました。
「一部損壊」のなかに「床下浸水」が含まれるため、床下浸水であれば、6万円が受け取れるというわけです。
なお、床下浸水の場合に義援金が受け取れるかどうかは、そのときの状況によります。
市区町村によっては、義援金を配分していない市区町村もあります。
公的支援を受け取るために、被災後速やかに「り災証明書」を申請しておきましょう。
3つ目のパターンが「災害見舞金」です。
災害見舞金とは、被災した住民に対して配られる見舞金のことをいいます。
床下浸水だったとしても、災害見舞金を受け取れる場合があるのです。
たとえば、2016年に熊本に大きな被害をもたらした「平成28年梅雨前線豪雨災害」においては、
以下の条件に該当する人に、災害見舞金が配分されました。
「平成28年梅雨前線豪雨災害」における住宅補修見舞金の対象者
これを見ると、細かな条件はありますが「一部損壊」と認定された世帯が、災害見舞金を受け取れます。
一般的に「床下浸水」は「一部損壊」に含まれるので、本件の場合には災害見舞金を受け取れる可能性が高いです。
こちらも被災後、速やかに「り災証明書」の発行を申請して、災害見舞金が配分されないか、地方自治体の動きを継続的にウォッチしましょう。
もし何らかの組織に属している場合、その組織を通じて災害見舞金が受け取れるケースがあります。
たとえば、2016年に熊本に大きな被害をもたらした「熊本地震」では「熊本県歯科技工士会」に所属する会員向けに、災害見舞金と復旧見舞金が支払われました。このケースでは「家屋一部損壊」の被害を受けた方にも、復旧見舞金として2万円が支払われています。
出典:家屋被害者への「災害見舞金」・『復旧見舞金』給付手続きのご案内
ご自身が所属している組織がある場合、何らかの復旧見舞金が受け取れるかチェックしておきましょう。
今回は床下浸水の被害に遭った場合に「火災保険の損害保険金が受け取れるのか」「行政からの公的支援や義援金が受けられるのか」についてみてきました。
結論は、一般的に床下浸水ではどちらも受け取ることができません。
しかし、床下浸水でも火災保険や義援金が受け取れるレアケースがあります。
それが次の4つです。
台風や豪雨で床下浸水してしまったときは、速やかに「り災証明書」の発行を申請し、受け取れる義援金や見舞金があるか確認してみましょう。